校 長 が ゆ く 真 空 地 帯

かつて、Yahooブログで特撮関連のブログを運営していました。特撮の作品、玩具、イベントについて幅広く掲載しています。かつてのブログで公開していたウルトラファイトも新作、旧作併せて掲載しています。

絶対に他所のバイアスかけてはいけないシン・ウルトラマン感想 後編

「シン・ウルトラマン」見ました。
公開日から鑑賞後まで、ネット上での一切の他者の感想をシャットアウトして
感想を記事としてまとめました。ネタバレ全開。
今回は、後編です。

現在作品は上映中の段階であり、配信・ソフト販売もされていないため、
自宅にて内容の確認が困難な状況で、本記事は作成しました。
細部に異なる認識がある場合も大いにあります。
しかし、本記事は他者の感想の影響を排除し、初回鑑賞時の純粋な作品感想を残す意図もあるため、了承の上、ご覧ください。

今回は、全体のなかで印象に残ったものを箇条書きでまとめています。



3.随所に散りばめられた小ネタ

・冒頭でぺギラ、ラルゲユウス、と続いて登場したカタツムリのような禍威獣「カイゲル」は、一見聞き慣れない名前のように思いますが、旧作のゴーガの企画段階の名称を引用したもの。ほかにも、ネロンガガボラの前にパゴスが出現していたり(デザインも今回のもの基準)と、短い間に小ネタと情報量を詰めこんだ導入が続きます。正直、この時点で見ていて情報量の多さに頭がパンク状態でしたが・・・。着ぐるみの制約上、やむを得ず誕生した経歴のあるバラゴン系列の怪獣たちに設定上のリンクを持たせたのは、既存のキャラクターへの好意的な解釈でありますが、その設定を物語上生かしていたのが印象的です。

(ここら辺からちゃんとした記事として書くことを放棄して、メモのような体裁になっていきます。)

ネロンガの電撃を胸筋バリヤ、偽ウルトラマンにチョップして痛がる仕草、メフィラスとの戦闘、基本的に旧作を踏襲した戦闘シーンで構成。絶大的なファンの人気を誇る戦闘シーンのリメイクは惹きつけられる。特に、ザラブ星人との空中戦は、シーン、音楽、スピード感、戦闘のテンションともに、G3の空中戦のクオリティを、邦画特撮でついに更新した感がある。

・選曲が、作品のテンションと一致しているのが見事。

・狙ったかのように、大怪獣のあとしまつの出演者が同じような役で軒並み出演していたのはどういうことなのか・・・。偶然?強烈な逆カウンター?
加えて、シンゴジラのセルフパロデイのようなセリフ、描写多数。あの映画よりシーンも割く時間も少ないが、よっぽどパロディになっていた。



4.ウルトラマンのデザイン・描写について
ウルトラマンは、初登場時、全身銀色の状態かつAタイプのマスク。まさに、正体不明の銀色の巨人。展開が進むと、赤のラインや顔のデザインがCタイプになるが、ストーリーの展開的にもヒロイックな部分が付加されていくのとデザインのテンションが比例しており、良い。成田亨氏のデザインに基づき、カラータイマーは排除したデザインだが、エネルギーの消費を体色の変化で表現。

かつてウルトラマンのデザインに盛り込まれたカラータイマーは、白黒テレビで見ている視聴者にも伝わるよう、点滅する仕組みになっていた。
今回、ウルトラマンの造形コンセプトとしてカラータイマーは排除されているが、それと同時に現代のシン・ウルトラマンはカラー作品であり、点滅せずとも体色の変化でエネルギーの消耗を表現しているのは、今、1から初代ウルトラマンを作り上げたらというコンセプトに非常に合致しているため、違和感がなかった。

個人的に、序盤はAタイプで徐々にマスクがカチッとしていくのではないかという予想が当たってうれしかった。
あと、銀色タイプや緑バージョンのウルトラマンは絶対ソフビで出すんだろうなぁ。あと、ゾーフィもリデコで出せるしなぁ。
バンダイから出したアイデアではないんだろうけど、そういうことになって彼らは嬉しそう。(笑)

長澤まさみが初めてウルトラマンを目撃するシーンで「美しい」と言っていたのは、桜井浩子さんが初めてウルトラマンを見たときの感想に着想を得て、同立ち位置のヒロインに劇中でそれを言わせちゃったのかな?と思った。(桜井さんは様々な媒体で、ウルトラマンを初めて見たときの感想を、美しい・綺麗と語っています)






5.怪獣の描写
・「シン・ゴジラ」はゴジラは暴れ回るわけではなかったが、今回は対照的に存分に暴れ回るネロンガガボラを見られて満足。CGのクオリティも違和感がなかった。随所にアナログ特撮の要素を感じさせる描写があり、良い。ネロンガの角の透明感が造形物っぽい、ウルトラマンの質感がスーツ生地のような質感になっている、明らかに飛び人形っぽい質感をしているなど。

ネロンガガボラ、それぞれオリジナルに準拠したバトルフィールドで、差別化された戦い。ガボラ戦では肉弾戦が十分に描写されており、贅沢なバトルシーンであった。

・また、ガボラ編でMOP2が登場。ここでも、「シン・ゴジラ」でおなじみの要素登場でつながりを感じさせる。

ゼットン、生物というよりは、宇宙戦艦のような存在。今回は、恐怖感よりも得体の知れなさが先行。ウルトラマンを倒すことで強敵感などというレベルでもなく、笑ってしまうという余裕もなく、静かに絶望する、新しい感覚。ゼットンに最後の戦いを挑むウルトラマンのシーン、静かに盛り上がる。





6.今作の世界観

シンゴジラでは怪獣が異質な存在であるが、すでに本作では怪獣の存在が異質ではなくなっているさまを描いている。ポスト怪獣。本来ウルトラマンの世界では、怪獣は頻出する存在であるため違和感のない世界観だったと感じる。怪獣が出現しても、台風や火事から逃れる程度の脅威のボリューム感。そのボリューム感が、作り上げられたSF的な世界観を構築していると感じた。現実的な世界観に虚構が入り込む面白さとは別の、独自の世界観が緻密に構築される面白さ。そして、初代の要素を踏襲しているのが、そのような世界観でありながら、妙に日常的な風景を織り交ぜた絵作り、要素がある事。公園のブランコや人間の親子、居酒屋。まさに、ローテクSFといった感じ。人間の日常的な部分とはかけ離れた、スケールの大きいストーリーラインであるにもかかわらず、それに対照的な我々の普段見るような描写が入ることによって、違和感なく観ることができるという不思議なロジックが成立していると感じた。独自のバランスがある世界、作品のムードが一辺倒ではなく、バラエティに富んでいる。硬派ながら、ソフトを織り交ぜている感じ。シンゴジラと比較すると、デフォルメされた世界観。




7.今作のストーリー

・ストーリー的には、メフィラスが良かった。かつて、子供に挑戦し、地球を奪えなかったメフィラス。現代では、政治家相手に、いとも簡単に政府を掌握。旧作との対比。子供が守った地球が、簡単に政治家の利害判断によって売り渡される。強烈な風刺。初代の、必ずまたやってくるぞ、というあの声が、別の形で実現・再来したかのよう。
・偽ウルトラマン・巨大長澤まさみ・ザラブの薄さ、バラエティに富んでいる。コミカルなものもありながら、描写としてユニークなものや、特撮でやることで面白いことも再現。ウルトラマンという作品は、ただ怪獣や宇宙人とウルトラマンが戦うのではなく、そういった奇想天外なおもちゃ箱のようなバラエティがあるのが、魅力。

・旧作のセリフ多数踏襲。放たれ方や引用の方法が変わっているものあり。詳しくは覚えていないが、多数そのようなセリフがあった。改めて細かく比較したい。特に、メフィラス回であった、人間とウルトラマン両方であるこののセリフが、全体的な設定・作品の抱える思想に生かされている。

・今作の設定の積み重ねは、近年のウルトラにあるような集合要素・つじつま合わせ的な設定ではなく、高度な宇宙文明があることを現実的に想定した上でのSF的設定。説得力がある。侵略目的の解釈も唸った。地球が欲しい、ではなく、さらに細かく、地球をできる限り今の形で保存したい、人間は兵器化、など、より脅威として描写。




8.ウルトラマンと人間

ウルトラマン長澤まさみのコミュニケーション、描写がSF要素の中に輝くファンタジー要素となっていてよいスパイス。旧作やシリーズ中でウルトラマンと少年として描かれていた関係性を、相棒の女性に置き換えて一般向け映画向けにアレンジ。チームとしては相棒であるが、友情ともそれ以上の感情(しかし、決して色恋とは限らない塩梅)ともとれる不思議な関係性が魅力的。マニア的には、ここに自分を投影できるとも考える。

・徐々に意思疎通が重なるウルトラマンガボラ戦では彼の人間を守るという強い意思を匂わせ、ザラブ戦でそれは確信に変わる。メフィラス戦では相互に協力し、名実ともに地球を守る。そして、それまでの積み重ねがゼットン戦でウルトラマンの決意につながる。その決意に、ヒロイズムを感じずにいられない。全く初代ウルトラマンと戦う動機が異なるのにも関わらず、芯にこもる意思、そのまなざし、背中、姿はウルトラマンそのもの。今作のデザインを見たときは


・正義の味方ではなく、狭間にいる存在。旧作のウルトラマン、よく考えてみると戦う理由があいまいだったのかなと思った。お人よしな宇宙人というラインもよいが、かつてウルトラマンを作るときに打ち立てたラインである、違う文明を持った高度な異星人というライン。人類を滅ぼす、というセリフをウルトラマンが口にするのは衝撃的だったが、決して従来のキャラクターのが発言しているわけでなく、世界観の構築がなされているからこそ違和感無く入ってくる。この点は、全く新しいウルトラマンの魅力。今後もウルトラマンという、キャラクターが広がる可能性を感じた。

・全く予想外の登場だったゾーフィ、しかも、児童誌ネタを踏まえての登場。ウルトラセブン的要素も含んでいる今回のウルトラマンだったが、本人の言う通り、最終的に希望を持ったからこそゾーフィに助けられ、主人公にその命を託したウルトラマン。それに心を動かされるゾーフィ、という流れをトータルで見たときに、鑑賞している私たちから見て、彼らの人間に近い部分というのを感じることができる。映画としてもシン・ゴジラと違って前向きなオチになったのが良かった。

・常に狭間で一定点から戦ったウルトラマン、彼に命をもらった主人公が目を覚ましたとき物語は終わる。次に現実世界で生き方を決めるのは、観客の我々だ。




9.最後に...
シン・ゴジラとの積極的なつながりを断つようなシーンを見せておきながら、一切の役名を伏せて登場する政府の男、竹野内豊。加えて、本作の総理大臣はシン・ゴジラで臨時大臣(平泉成に続くナンバー2的立ち位置)を演じた島田久作。あの映画では、平泉成は最後臨時総理大臣を辞任したから、その次に総理大臣になるとしたら・・・なるほど、という感じ。やはり、アフターシンゴジラ的な要素が多い。キャラが全くつかめなかったので確信はないが、ウルトラマンと会話するときの政府の男の印象、かつてシンゴジラでも見たような印象が・・・。 













こんな感じです。
いやー、面白かった。シンゴジラは、堅実な映画だったと感じますが、今作はずばり、飛躍といった印象。
何より、初代ウルトラマンのバラエティに富んでいて、SFでもありながら庶民派なドラマの空気が現代流に再現されているのがうれしかったです。

しかし、この程度でも感想をまとめるの、疲れました。(大した事も言って無いのに...。)
やっぱり、次から感想はツイートでダラダラ流すので、いいや...。